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Keiichi HayashiK1884 Research Technology Space Industry Space Access Satellite Operations

Kayhan Space

衛星の衝突回避を自動化する世界最大級の商用宇宙交通調整SaaS

Kayhan Space logo

公式サイト: kayhan.space

設立
2019年
米コロラド州ボルダー
従業員
約20〜30名
2024年時点
累計調達
約1,220万ドル
2023年時点 (推定)

基本情報

Kayhan Space Corp. は2019年に米コロラド州ボルダーで設立された宇宙状況把握(SSA)・宇宙交通調整(STC)のソフトウェア企業である(出典: Wikipedia「Kayhan Space」, 2026年6月時点)。共同創業者は CEO の Siamak Hesar と CTO の Araz Feyzi の2名。Hesar はコロラド大学ボルダー校で航空宇宙工学の博士号(精密軌道決定が専門)を取得し、NASA ジェット推進研究所(JPL)在籍時に小惑星サンプルリターン探査機 OSIRIS-REx の電波科学ワーキンググループに参画した経歴を持つ。Feyzi はインターネット機器セキュリティ企業 Syfer の共同創業者でもある(出典: Wikipedia, LinkedIn)。両名とも米国帰化市民で、同社は「米国資本・米国運営」を明示している。

Seraphim Ecosystem Map 2026 上の分類は Space Access 内の Satellite Operations、その中の Mission Ops Software。事業は完全に宇宙専業で、衝突回避・宇宙交通管理(STM)の自動化ソフトウェアに特化している。従業員は2023年時点で約20名、2024年にかけて30名超へ増員し、ワシントンDC近郊にオフィスを開設して政府向け事業を強化している(出典: Payload「Kayhan Space Closes $7M Seed Extension」, 2023年9月)。

同名で紛らわしい他社は特に見当たらないが、本レポートは米国の衝突回避・STM 自動化ソフト企業 Kayhan Space を対象とする。

顧客課題と製品

主な顧客は低軌道(LEO)の商用衛星オペレーター、および政府・防衛機関である。軌道上の物体は6万を超え、衛星が急増する中で「どの接近(コンジャンクション)が本当に危険か」「誰がいつ回避マニューバを実施すべきか」の判断は従来、オペレーターごとに手作業とメール・電話で行われ、対応が遅く属人的だった。Kayhan はこの判断・調整プロセスを自動化する。

主力製品は以下。すべてクラウド型ソフトウェア(SaaS)であり、ハードウェアは持たない。

  • Pathfinder: LEO オペレーター向けの衝突回避 SaaS。接近解析、AI/ML による危険度評価、回避マニューバ案の生成を自動化する。無料版と有償の Pathfinder Pro があるフリーミアム構造。既存顧客に Capella Space、Lynk Global、Globalstar などを挙げている(出典: Wikipedia)。
  • Satcat Product Suite: 2025年2月に正式リリースした統合プラットフォーム。データ基盤 Satcat と運用ツール Pathfinder を1つに統合し、12以上のソースから6万超の宇宙物体データを集約、リアルタイム SSA・接近評価・オペレーター間調整を提供する(出典: SpaceWatch.GLOBAL, 2025年2月)。
  • Satcat Terminal: 2026年3月20日発表。投資家・保険会社・事業会社向けに、平易な自然言語で軌道データを問い合わせられる AI チャット型の情報端末。3万6千超の追跡物体・1万1千超の衛星の日次更新軌道データを基盤とする(出典: SpaceNews, 2026年3月; BusinessWire, 2026年3月20日)。
  • そのほか軌道推定・シミュレーションの Dynamics(旧 Eagle)、打ち上げ軌道の衝突防止・政府申請支援 Gamut、Astroscale・テキサス大学と共同開発したランデブー・近接運用 Proxima がある(出典: Wikipedia)。

導入前後の変化として、同社は対応時間を「95%以上」短縮し、不要な回避マニューバ(燃料・寿命の浪費)を減らすと主張する(出典: 公式サイト)。乗り換えの理由は自動化による省力化とカバレッジの広さ。導入をためらう要因(推測)は、無料版で足りるケースがあること、政府の TraCSS 等の公的サービスと機能が一部重なることである。

ビジネスモデル

料金を支払うのは衛星オペレーター、政府機関、そして新たに金融・保険プロフェッショナルである。収益モデルはサブスクリプション型 SaaS が中心で、無料版で裾野を広げ、Pathfinder Pro / Satcat の有償階層や Satcat Terminal へアップセルするフリーミアム構造。ソフトウェア専業のため粗利率は高くなりやすく、製造設備・在庫を持たない。固定費は主に人件費(エンジニア中心の約20〜30名)。

単価は非公開。継続収益(サブスク)が基本で、オペレーターが管理衛星数を増やせば自然に単価が上がる拡張余地がある。データ基盤(3万6千超の物体カタログ)は一度構築すれば追加顧客への提供限界費用が小さく、顧客増に伴い利益率が改善しやすいソフトウェア型の構造(推測)。Satcat Terminal による投資家・保険向け展開は、宇宙オペレーター以外の新たな課金層を開拓する動きで、TAM 拡大とアップセルの両面で意味を持つ。

市場と競争力

対象市場は SSA・STM ソフトウェア。衛星急増(メガコンステレーション)と軌道混雑を背景に立ち上がっており、規制面でも米国では商務省宇宙商業局(OSC)の TraCSS が国防総省の従来型接近スクリーニングを商用向けに置き換える動きが進む。Kayhan はこの TraCSS のデータ品質モニターに選定されており、公的移行の中核に位置している(出典: 各種報道, 2025年)。

主要競合は Slingshot Aerospace、LeoLabs、COMSPOC、ExoAnalytic、欧州の Neuraspace など。従来の代替手段は国防総省/Space-Track の無料データと自社手作業、あるいは大手のカスタム解析。Kayhan の差別化は、(1)接近検知から回避判断・オペレーター間調整までを end-to-end で自動化する点、(2)Space Safety Coalition のガイドラインに基づき「どちらが回避するか」の責任割当まで運用化した点、(3)無料版と統合データ基盤による広いカバレッジである。同社は Satcat Operations が「稼働中 LEO 衛星の90%超、50社超のオペレーター」をカバーし「世界最大の商用宇宙交通調整プラットフォーム」だと主張する(出典: SpaceNews, 2026年3月)。

参入障壁は、多数のオペレーターが同一プラットフォームに乗ることで生じるネットワーク効果(調整は相手も同じ土俵にいるほど有効)、集約データの蓄積、そして政府契約・TraCSS 選定による信頼性である。切り替えコストは運用フローへの組み込みにより中程度(推測)。ただしデータの多くは公開情報(Space-Track、Celestrak 等)由来であり、コア資産はデータそのものよりカバレッジ・自動化・調整ネットワークにある。

実績と成長性

  • 顧客カバレッジ: 50社超のオペレーター、稼働中 LEO 衛星の90%超をカバー(出典: SpaceNews, 2026年3月)。2023年時点では約20顧客・500超の衛星だったため、2〜3年で大幅拡大している(出典: Payload, 2023年9月)。
  • 政府・防衛実績: 国防総省、商務省、NASA との契約を明示。2022年9月に Space Force の Orbital Prime(SpaceWERX)Phase 1 で25万ドルを Astroscale・テキサス大学と共同受注(出典: SatNews, 2022年9月)。TraCSS のデータ品質モニターに選定(出典: 各種報道, 2025年)。
  • 製品実績: Capella Space、Lynk Global、Globalstar など商用オペレーターで実運用中(出典: Wikipedia)。
  • 直近の製品展開: 2025年2月 Satcat Product Suite 統合、2026年3月 Satcat Terminal で投資家・保険市場へ拡張、2026年5月に CTO が欧州 SmallSat イベント登壇と、国際・隣接市場への拡大が続く(出典: SpaceWatch/SpaceNews/SatNews)。
  • 財務情報(売上・利益・粗利)は非公開。代替指標として、従業員数の増加、オフィス拡張(DC近郊)、顧客・衛星カバレッジの急拡大、新規市場(金融・保険)への製品投入が成長を示す。

資本政策と投資評価

累計調達額は2023年9月時点で報道により約1,070万〜1,100万ドル(2023年基準, USD)、PitchBook では4ラウンドで約1,220万ドルとされる(出典: Payload/PitchBook)。主なラウンドは以下。

  • 2021年12月: シード 370万ドル(2021年基準)。Initialized Capital と Root Ventures が共同リード、Overline、Jacob Helberg が参加(出典: Kayhan 公式/SpaceNews)。
  • 2023年9月: シード拡張 700万ドル(2023年基準)。Space Capital と EVE Atlas が出資(出典: Payload/SpaceNews, 2023年9月)。

推定バリュエーションは非公開。政府補助金・契約(Orbital Prime 25万ドル、TraCSS 関連、DoD/NASA/商務省契約)を獲得。借入の情報は確認できず。2023年以降の新規大型ラウンドは確認できず、次の成長段階(Satcat Terminal の投資家・保険市場展開、政府向け拡大)に向けてシリーズ A 規模の追加調達が必要になる可能性が高い(推測)。出口としては、Slingshot・LeoLabs 等との統合や、SSA を求める大手防衛・地理空間企業による M&A が現実的なシナリオ(推測)。売上非公開のためマルチプル比較は困難。

総合評価

一言で表せば「商用宇宙交通調整のデファクト・プラットフォームを狙うソフトウェア企業」。顧客が選ぶ最大の理由は、接近検知から回避判断・オペレーター間調整までを一気通貫で自動化し対応時間を大幅短縮する点と、50社超・LEO の90%超という広いカバレッジによるネットワーク効果である。最も強い競争優位は、この調整ネットワークと TraCSS 選定を含む政府からの信頼。

最大の事業リスクは、(1)コアデータの多くが公開情報由来で模倣余地があること、(2)無料版・公的 TraCSS との機能重複による有償転換率の不確実性、(3)売上規模・収益性が非公開で持続的なマネタイズが未検証なこと。今後3〜5年の成長ドライバーは、無料ユーザーの有償転換、政府・防衛契約の拡大、Satcat Terminal による金融・保険という新課金層の開拓、そして国際展開。競合の中では機能統合と自動化・カバレッジで先行するが、SSA データ観測網を自前で持つ LeoLabs や解析規模の大きい Slingshot に対しデータ源泉の独自性では劣る。投資対象としての魅力度は中〜やや高。売上・バリュエーション・有償転換率が非公開のため、収益性の判断は現時点で保留。

重要事項サマリー

項目内容情報源・時点
設立 / 本社2019年 / 米コロラド州ボルダーWikipedia, 2026
創業者Siamak Hesar(CEO)、Araz Feyzi(CTO)Wikipedia/LinkedIn
従業員約20〜30名、DC近郊オフィス開設Payload, 2023年9月
事業分類Space Access · Satellite Operations · Mission Ops SoftwareSeraphim Map 2026
主力製品Pathfinder、Satcat Product Suite、Satcat Terminal公式/SpaceNews, 2025–2026
ビジネスモデルフリーミアム型サブスク SaaSPayload/SpaceNews
顧客カバレッジ50社超、稼働中LEO衛星の90%超SpaceNews, 2026年3月
追跡物体3万6千超(衛星1万1千超、日次更新)BusinessWire, 2026年3月
主要顧客Capella Space、Lynk Global、Globalstar 等Wikipedia
政府実績DoD・商務省・NASA 契約、Orbital Prime 25万ドル、TraCSS データ品質モニターSatNews 2022 / 各報道 2025
累計調達約1,070万〜1,220万ドル(2023年基準)Payload/PitchBook
直近ラウンド2023年9月 シード拡張 700万ドル(Space Capital、EVE Atlas)Payload/SpaceNews, 2023年9月
バリュエーション非公開
事業の強さ7/10本レポート評価

情報源