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Keiichi HayashiK1884 Research Technology Space Industry Space Access Launch

Rocket Lab

小型ロケットElectronで打上げ市場2位、宇宙システムへ垂直統合する上場ロケット企業

Rocket Lab logo

公式サイト: rocketlabcorp.com

設立
2006年
米カリフォルニア州ロングビーチ
従業員
約2,600人
2026年7月時点
上場企業
時価総額 約485億ドル
NASDAQ: RKLB / 2026年7月

基本情報

Rocket Lab は2006年に Peter Beck 氏がニュージーランドで創業し、現在は米カリフォルニア州ロングビーチに本社を置く上場宇宙企業である(NASDAQ: RKLB)。2021年8月にSPAC(Vector Acquisition)との合併で上場した。従業員は約2,600人(2026年7月時点)、時価総額は約485億ドル(2026年7月12日時点、出典: PitchBook/市場データ)。創業者の Peter Beck 氏がCEOを続投している。

Seraphim Ecosystem Map 2026 上の分類は Space Access > Launch > Rockets。事業は大きく2つ、(1)ロケット打上げサービス(Launch Services)と、(2)衛星・宇宙機コンポーネントおよびシステムを手がける宇宙システム事業(Space Systems)からなる。宇宙専業だが、打上げから衛星製造・部品・地上運用まで垂直統合を進めている点が特徴である。主要事業地域は米国とニュージーランド(打上げ場・製造)。2026年4月14日にレーザー光通信端末の Mynaric AG(独ミュンヘン)の買収を完了、さらに宇宙ロボティクスの Motiv Space Systems の買収も2026年5月26日に完了した(出典: Rocket Lab IR 2026年4月14日/5月26日発表)。

顧客課題と製品

主な顧客は、小型衛星を運用する商業事業者、政府・防衛機関(米国防総省、AFRL、NASA、各国宇宙機関)、そして衛星コンステレーション事業者である。顧客の課題は、(1)小型衛星を希望の軌道・時期に安価に打ち上げたい、(2)相乗り(ライドシェア)では希望軌道や打上げ時期を選べない、(3)衛星の部品・システムを信頼できる供給元から一括調達したい、というものだ。

主力製品は3つに整理できる。第一に小型ロケット Electron(ハードウェア/打上げサービス)。LEOに約300kgを運ぶ専用小型ロケットで、世界で最も打ち上げられている小型ロケットのひとつである。派生型 HASTE は極超音速試験用の弾道飛行を提供する。第二に開発中の中型ロケット Neutron(LEOに約13,000kg、第1段再使用、Archimedesエンジンはメタン/液体酸素)。第三に Space Systems(ハードウェア)として、衛星バス(Photon)、太陽電池パネル、反応ホイール、スタートラッカー、無線機、分離機構、そしてMynaric由来のレーザー通信端末など、他社衛星にも供給するコンポーネント群を持つ。

導入前後の変化として、専用小型打上げは相乗りと異なり顧客が軌道と打上げ時期を指定でき、コンステレーション運用者にとって配備計画の確実性が上がる。Electron の価格は非公開だが1機あたり約750万〜900万ドル程度とされる(推測、業界報道ベース)。乗り換えの理由は「専用便としての柔軟性」と「打上げから部品まで一社調達できる利便性」。導入をためらう理由は、小型ロケットは相乗りより単位質量あたりコストが高く、大量配備ではSpaceXの相乗りやNeutron級の中型機が有利になる点である。

ビジネスモデル

料金を支払うのは打上げ顧客(1発ごとの受託)と、衛星メーカー・政府機関(部品・システム供給)である。収益モデルは主に売り切り型で、Launch Services は打上げ1発ごとの受託契約、Space Systems はコンポーネント/衛星バスの製造販売と一部の設計受託。継続収益(サブスクリプション)は限定的だが、コンステレーション顧客との複数便契約(例: 2026年に確定した秘匿顧客とのNeutron5発+Electron3発、2029年まで)が受注残として積み上がる構造である。

粗利率はGAAPベースで2026年Q1に38.2%まで改善した。ただし製造設備・打上げ場・多数の人員という固定費が重く、営業損益は依然赤字である。売上拡大とNeutronの量産化に伴い利益率が改善する構造だが、Neutron開発と買収統合が先行投資として利益を圧迫している。顧客獲得から売上計上までの期間は、Electronで数カ月〜1年超、Neutronのような大型契約では複数年に及ぶ。アップセルとしては、打上げ顧客に自社製衛星バス・部品を売る垂直統合クロスセルが成長ドライバーとなる。

市場と競争力

対象市場は、小型・中型ロケット打上げと、衛星コンポーネント/システム市場である。世界の商業打上げ・宇宙システム市場は数百億ドル規模で成長が続く。競合は、小型・中型打上げで圧倒的シェアを持つSpaceX(Falcon 9、相乗り便)、Firefly Aerospace(Alpha/MLV)、Relativity Space(Terran R)、ULAなど。従来の代替手段はSpaceXの相乗りライドシェアと各国の政府系ロケットである。

Rocket Lab の優位性は、(1)Electron が実運用実績で小型ロケット打上げ数で米国2位という信頼性・実績、(2)打上げから衛星部品・システムまでの垂直統合、(3)政府・防衛顧客との関係(AFRLのRocket Cargo契約、Golden Dome関連のHASTE極超音速試験)である。参入障壁は、ロケットの型式認証・打上げ場(Wallops LC-3、NZ)・軌道投入実績の積み重ねという模倣困難性、そして規模の経済にある。一方でSpaceXのコスト・打上げ頻度には及ばず、Neutron が計画通り立ち上がらなければ中型市場での競争力に不安が残る。今この市場が立ち上がる背景は、衛星コンステレーション(通信・地球観測・防衛)の急拡大による打上げ需要の構造的増加である。

実績と成長性

2025年通期は過去最高の売上6.02億ドル(前年比+38%)、受注残は前年比+73%増の18.5億ドル(約$1.85B、2025年末)。Electron/HASTE を年21回打ち上げ、年間打上げ記録を更新した。セグメント別では Space Systems が4.028億ドル(66.9%)、Launch Services が1.990億ドル(33.1%)。ただしGAAP営業損失は2.288億ドル、純損失1.982億ドル、調整後EBITDA損失1.012億ドルと赤字が続く(出典: Rocket Lab 2026年2月26日 FY2025決算)。

2026年Q1は四半期売上が過去最高の2.003億ドル(前年比+63.5%)、GAAP粗利率38.2%、受注残は22億ドル超、流動性20億ドル超。セグメント別は Space Systems 1.367億ドル(+57.2%)、Launch Services 6,370万ドル(+78.9%)。Q1に31件のElectron/HASTE契約と5件のNeutron便を新規受注し、Q1単独で2025年通年を上回る打上げを販売した(出典: Rocket Lab 2026年5月7日 Q1決算)。Q2 2026ガイダンスは2.25億〜2.40億ドル。

最大の焦点は中型機 Neutron。1月のタンク破損試験を受けて初打上げは2026年第4四半期以降に再延期された(2度目の延期)。初号機はWallops(バージニア州)へ搬送され統合予定。Neutron が量産軌道に乗れば売上規模が段違いに拡大する一方、遅延が続けば成長シナリオの中核が揺らぐ。

資本政策と投資評価

2021年8月にSPAC(Vector Acquisition)合併で上場、企業価値約48億ドル(equity)、グロスで約7.77億ドルを調達。IPO前のVC調達は累計約2.9億ドル(Khosla、Bessemer、DCVC、オーストラリア Future Fund 等)。上場後は転換社債や公募増資でも資金を調達しており、2026年Q1時点の流動性は20億ドル超と潤沢である。政府契約はAFRL(Rocket Cargo)、NASA、国防関連(Golden Dome関連のHASTE)など多数。

時価総額約485億ドル(2026年7月)に対しFY2025売上6.02億ドルで、売上マルチプルは極めて高い(約80倍水準、推測)。これは黒字化前でありながらNeutronと宇宙システム統合による将来成長を織り込んだ「成長期待先行」の評価である。M&Aは買い手側として活発(Mynaric・Motivともに2026年に買収完了)。追加調達は当面の運転資金では不要と見られるが、Neutron量産や大型買収で追加のエクイティ/デット調達を行う可能性がある(推測)。

総合評価

Rocket Lab を一言で表すと「SpaceXに次ぐ、実績のある垂直統合型ロケット・宇宙システム企業」である。顧客が選ぶ最大の理由は、Electron の高い打上げ実績・信頼性と、打上げから衛星部品まで一社で揃う利便性。最も強い競争優位は、多数の軌道投入実績・政府防衛顧客・垂直統合という模倣困難な組み合わせにある。

最大の事業リスクは Neutron の開発遅延(既に2度延期)と継続赤字であり、Neutron が中型市場で通用しなければ成長ストーリーの根幹が崩れる。今後3〜5年の成長ドライバーは、(1)Neutron の商用化とコンステレーション顧客の獲得、(2)Space Systems のクロスセル拡大、(3)Mynaric/Motiv 買収による部品ポートフォリオ強化、(4)防衛需要(Golden Dome等)。競合との相対位置は、打上げ頻度・コストでSpaceXに劣後するが、上場純宇宙企業としては最有力で、Firefly/Relativity より実績で先行する。情報不足で判断できない点は、Electronの実際の単価と1発あたり粗利、Neutronの最終的な打上げ価格と初期成功率、買収の統合効果の定量化である。投資対象としては高成長・高期待だが割高で、Neutron 実現リスクを織り込む必要がある。

重要事項サマリー

項目内容情報源・時点
設立 / 本社2006年 / 米ロングビーチ(NZに製造・打上げ)PitchBook 2026
上場 / ティッカー2021年8月 SPAC上場 / NASDAQ: RKLBCNBC 2021-08
時価総額約485億ドル2026-07-12
従業員約2,600人2026-07
FY2025売上6.02億ドル(前年比+38%)決算 2026-02-26
FY2025純損失1.982億ドル(営業損失2.288億ドル)決算 2026-02-26
受注残22億ドル超Q1決算 2026-05-07
Q1 2026売上2.003億ドル(+63.5%)/ GAAP粗利率38.2%Q1決算 2026-05-07
セグメントSpace Systems 約67% / Launch 約33%(FY2025)決算 2026-02-26
主力製品Electron(小型)/ HASTE / Neutron(中型・開発中)/ 衛星部品公式
Neutron初打上げ2026年第4四半期以降(2度延期)SpaceflightNow 2026-05
主要買収Mynaric(2026-04-14完了)/ Motiv Space Systems(2026-05-26完了)Rocket Lab IR 2026
累計調達SPAC約7.77億ドル+IPO前VC約2.9億ドル ほかCNBC/SEC 2021

情報源